購買心理を促進する方策② 価値を高める「希少性」を利用する4つのポイント
執筆者
認定心理士マーケター
村田芳実
マーケターなら商品の価値を高める方法を知りたいでしょう。そこで、それを実現する研究について紹介しましょう。それが、「希少性」、少ないものに価値を感じるという心理です。これを使うと、味覚にも影響して、美味しく感じるという魔法のようなテクニックです。「希少性の原理」を使う4つのポイントを紹介します。
2020年2021年は新型コロナの影響もあり、ワクチン、マスク、トイレットペーパー、ポピドンヨード、ガソリン・石油製品、半導体など、連日、テレビで報道され、SNSでも拡散されました。これを引き起こしたのが「希少性の原理」によるものです。人為的にこの状態を作り出せば、購買心理を促進することができるはずです。
【希少性の原理が動き出す時】
社会心理学者ステファン・ウォーチェルは希少性の実験を行いました。
この実験では、被験者を2つのグループに分け、瓶の中のクッキーを与え、その味を評価してもらいました。
①参加者の半数には、10 枚のクッキーが入った瓶から1 枚を取り出して与えました
②残りの半数には2 枚しか入っていない瓶から1枚を取り出して与えました。
「②」のグループでは、「①」よりも「また食べたいと思う」、「商品として魅力的」「高級感がある」と評価されました。
また、もう一つ注目すべき実験が行われていました。「②」のグループを更に2つのグループに分けました。
(1)のグループ
はじめ10 枚のクッキーが入った瓶を与えられ、その後に 2 枚入った瓶に交換されました。10枚あったクッキーが減らされてしまうのを目のあたりにしました。
(2)のグループ
他の参加者には、クッキーが 2 枚入った瓶を渡されました。
結果的には、クッキーが 2 枚入った瓶になったのですが、(1)のグループの方が、クッキーに対する評価は高くなりました。つまり、ただ単に、少ない状態ではなく、減っているところを目の当たりにすることで、評価は高まるということです。
【希少性の原理が働く理由】
希少性の心理は、心理的リアクタンスによるものだと考えられます。リアクタンスとは抵抗のことであり、強制されることへの抵抗・反発を説明する理論です。
人間は昔から弾圧に対して戦ってきました。このように私たちは自由に行動したいという欲求を持っており、これを禁止された場合、人は自由の獲得するために反発して戦いますが、こうした心理が心理的リアクタンスです。クッキーを食べさせてもらえないかもしれないという状況に反発して、クッキーが欲しくなる(価値が高まる)というわけです。
【損失回避性】
心理学者のカーネマンとトヴェルスキーは行動経済学(※)の中で、「損失回避性」という理論を導き出しました。損失は同額の利得より大きく評価され、その数値は利得の2・25倍強く評価されることを示しています。どういうことかというと、100万円を失ったダメージは、225万円を獲得した喜びに匹敵し、損失を極端に嫌うということです。
「逃がした魚は大きい」といいますが、手に入れることのできなかったショックは大きいのです。こうなると、「値打があった(逃がした魚は大きい)」と悔しがるのです。
(※)行動経済学につきましてはURL「https://yonohi.net/douga_marketing/」をご覧ください。
【マーケティングへの活用 キーワードは、独占・特別・終了間近・イメージ】
以上のように、顧客の購入の自由を制限することで、心理的リアクタンスを活性化して購入意識を高めることができます。この心理を上手に使っているのが「ジャパネットたかた」のCMです。例えば、ハンディ掃除機です。「有名メーカーの掃除機を独占的に特別価格で販売します」という内容です。それに加えて、下取りもするというのですから、お得感もあります。そのうえ、「終了間近」というCMが流れ新聞広告も入りました。「独占・特別・終了間近」に弱いのが人の常です。
また、損失回避性を使う方法ですが、「決算特売ですから、通常はこの価格では販売できません」や「製作を停止した商品ですから、今後お求めできません」などのコピーを使うことが考えられます。また、「ご好評により、特別セールを実施!」という具合にPRすれば、買いそびれた人の購買心理を促進することができるでしょう。
そして、さらにおすすめなのが、社会的証明(http://yonohi.net/social_credibility_marke/)と組み合わせることです。大勢の人が詰めかける映像を見せることで、競争意識が働き、買いそびれる危険性(損失回避性)をイメージするからです。このイメージですが「大勢の人が購入されています。お急ぎください」というメッセージだけでは不十分です。多くの人々が購入する動画を入れるだけです。何故ならば、人間には視覚によって判断する傾向が強いからです。
このセオリーを活用した動画の事例には次のようなものがあります。
【執筆者プロフィール】
日本心理学会認定心理士・マーケター。一部上場の機械メーカーで、ユーザー会の立て直し、ブランディング、顧客満足のミッションを受け、心理学を応用することでミッションをクリア。『心理学と統計分析が最強の武器になるマーケティング戦略https://amzn.to/3ghFw3A』の執筆者