説得の心理学「社会的勢力」の使い方 マーケティングに社会的勢力を応用する記事は日本初
執筆者
認定心理士マーケター
村田芳実
企業経営者やマーケターとしては、ターゲットに対して説得力を高めたいと考えるものです。そのような時に使える心理理論に「権威への服従原理」と「社会的勢力」がありますが、専門性や権威性が説得力を向上させるという心理理論です。そこで、「権威への服従原理」「社会的勢力」を使い説得力を向上させる方法について事例を踏まえて説明します。また、これを実現するためのアニメ動画の役割を検討します。
【背景】
Googleは『検索品質評価ガイドライン』により、サイトの品質を向上させようという提案をしています(※1)。その中で、コンテンツの品質を評価するE-A-T(専門性、権威性、信頼性)は重要項目とされており、今後、専門性、権威性、信頼性について注目されることが予想されます。
また、説得力を高めるために使用できる心理セオリーに「社会的勢力」がありますが、表現が難解で、マーケティングに応用するweb記事はありませんでした。そこで、当レポートを制作することにしました。
【「権威への服従原理」「社会的勢力」とは】
まず「権威への服従原理」ですが、心理学者S・ミルグラムが提唱したセオリーで、私たちは、権威には逆らえず権威の指示に従わざるを得ないという理論です(※2)。また、「社会的勢力」は、他者に影響を及ぼすことのできる影響力のことであり、どういうケースの場合に「権威への服従原理」が働くかを示しています。心理学者ジョン・ロバート・パットナム・フレンチ・ジュニアとバートラム・ハーバート・レイヴンが社会的勢力を次のように分類しました(※3)。
- 専門勢力
専門家による影響力。医療、法律など特殊な領域において十分な知識があり、知識が豊かで経験を積んでいる専門家からの影響を受けやすくなるということ。 - 準拠勢力(参照勢力)
自分が憧れ尊敬している人の判断や行動に大きく影響されること。 - 情報勢力
エビデンスに基づいたロジカルなストーリーによる影響力。マスコミがその代表。 - 報酬勢力
報酬を与える立場(クライアント)からの影響力。クライアントはサプライヤーに報酬を与え、クライアントはサプライヤーをコントロールするほどの影響力を持つということ。 - 正当勢力
上司としての立場からの要請。特定の社会的地位にいることによって生じる影響力。 - 強制勢力
従わなければ罰を与えられることで、罰を回避するために、相手の命令通りに行動する以外はないということ。
【応用事例】
このうち、私が使用したのは「1、2、3」です。前職でも権威への服従の心理を活用させてきました。その事例について説明します。
- 専門勢力
前職では、経営者が出席するユーザー会で有名経営者による講演会を企画・開催しました。マーケティング戦略に基づいた講師、例えば、顧客満足であれば、顧客満足が有名な企業の経営者に講演をお願いしました。「経営の神様」の発言なので、参加者は納得せざるを得ないという仕組みです。 - 準拠勢力
業界のオピニオンリーダーに協力いただきました。オピニオンリーダーが自社製品を購入したら、業界全体も注目します。そこで、内覧会と記者会見を行いました。オピニオンリーダーが「○○社の製品は優れている」と評価してくれるのですから、納得せざるを得ません。 - 情報勢力
これは、コンテンツやプレスリリースを制作するときに役立ちます。重要なのが、エビデンスとストーリー、そしてソリューションです。きっちりした根拠に基づき、読者のために課題解決していくのです。
また、日本経済新聞、日刊工業新聞、テレビ東京などで報道してもらいました。メジャーな媒体で紹介されると大きな反響を得ることができ、説得力も向上します。
【社会的勢力のコンテンツへの応用事例】
私の記事は100本以上検索トップを記録してきました。例えば、私の書籍ですが、発売後5か月になりますが、いまだに(2022.1.11現在)検索1ページ目をキープしています。コンテンツを執筆するときのお手本は論文です。なぜなら、エビデンスをベースにロジカルなストーリーが必須で、社会的勢力が使われているからです。そこで、社会的勢力を使い、論文を手本とするためのポイントを述べていきます。
- 専門勢力や準拠勢力
専門家などに執筆してもらうことです。『検索品質評価ガイドライン』では、専門家が執筆することを想定しています。また、専門家のコメントをもらうことや監修を依頼する方法もあります。新聞などのメディアでの発言を根拠にすることもできます。 - 理論・論文・研究結果
心理理論・論文・研究結果なども根拠とすることです。研究者が誰で、どのような研究を行った結果の理論であることを明示することで、専門勢力や準拠勢力を明らかにします。 - 新聞・書籍
新聞などの報道を紹介することがあります。また、専門家の執筆した書籍からの引用も効果的です。 - 引用先・参考書籍の明示
根拠を示すために、論文名や書籍名、URLを掲載します。
【動画との親和性】
文章でも社会的勢力は利用できますが、動画で専門勢力や準拠勢力がコメントする方が、話し方や表情、身振りなど多くの情報が伝わり説得力があります。動画には、膨大な情報を短時間で理解させる特長がありますが、これを文字情報で表現すると、何枚もの原稿が必要になってきますので、読者は読むことに疲れてしまいます。
しかし、専門勢力や準拠勢力のコメントだけで、商品やサービスの良さを理解させることは、難しい場合があります。そのような時に使えるのがアニメーションです。
【まとめ】
「社会的勢力」とは私たち人間に影響を与える要因を分類した理論であり、専門家や権威者の発言が受け入れる(説得できる)状況を説明し、マーケティングに応用した事例とコンテンツに応用するときのポイントの説明をしてきました。このように、「社会的勢力」は使い勝手の良い理論であり、効果も期待できます。
「YONOHI動画マーケティングレポート」でも使用していますので、読み返していただくと使用法が理解いただけると思います。マーケティング施策の改善にご活用ください。
【執筆者プロフィール】
執筆は、心理学とマーケティングに詳しい村田芳実氏に依頼しました。
日本心理学会認定心理士・マーケター。一部上場の機械メーカーで、ユーザー会の立て直し、ブランディング、顧客満足のミッションを受け、心理学を応用することでミッションをクリア。『心理学と統計分析が最強の武器になるマーケティング戦略https://amzn.to/3ghFw3A』の執筆者
参考文献
(※1)「検索品質評価ガイドラインアイレップ私訳版」
https://www.irep.co.jp/press_pdf/google_general_guidelines_all.pdf
(※2)心理学と統計分析が最強の武器になるマーケティング戦略
(※3)最新 心理学事典「社会的勢力」の解説
https://kotobank.jp/word/%E7%A4%BE%E4%BC%9A%E7%9A%84%E5%8B%A2%E5%8A%9B-75664